🍶 Japanese Sake
2026年5月13日
クロフク編集長
丹沢の清水が育む誠実な酒
相模灘
こんにちは、クロフク編集長です。
今回紹介するのは、神奈川県相模原市に蔵を構える久保田酒造の地酒「相模灘」です。創業は1844年(弘化元年)。神奈川という酒どころのイメージが薄いなかで、丹沢山地に連なる山里で180年以上にわたって酒を醸してきた蔵元です。
その相模灘の歴史には、ある転機があります。久保田家はもともと酒造りを番頭や杜氏に委ねていましたが、蔵の存続が危ぶまれる時期を経て、久保田家の久保田博氏が継承。現在は次世代へと酒造りが受け継がれています。
そうして受け継がれてきた時間が、相模灘というお酒に静かに息づいています。
山里の蔵が守り続けてきたもの
久保田酒造の蔵は、神奈川県相模原市緑区根小屋にあります。城山ダム(津久井湖)にほど近い山間部で、南側に森が広がるため一年を通じて気温の変化が少なく、冬には氷点下にまで冷え込む。日本酒の醸造に理想的な環境です。
仕込み水には、丹沢山系から湧き出る清冽な水を使用。この水と厳しい寒さがあってこそ、相模灘の味わいが生まれます。山田錦、美山錦、雄町と多彩な酒米を使いながら、そのすべてに「食中酒として料理に寄り添う」という一貫した哲学が貫かれています。
派手さより誠実さを。それが、久保田酒造の仕事です。
① 相模灘 特別純米辛口 おりがらみ無濾過生 1800ml
相模灘を代表する特別純米辛口に、季節限定のおりがらみ仕立てを施した一本です。「おりがらみ」とは、醪の澱をあえて少量残した状態で瓶詰めしたもの。うっすらと白く濁った色合いの中に、フレッシュな旨みとガス感が閉じ込められています。
口に含むと、辛口らしいキリッとした輪郭がありながら、おりの旨みがそれを柔らかく包んでいます。辛さと旨みが口の中で押し引きして、余韻に濃密なコクが残る。グラスを傾けるたびに澱が舞う様子も、日本酒らしい美しさを感じさせてくれます。
ふだん辛口の日本酒を好む方にも、フレッシュな季節酒を初めて試したい方にも手に取ってもらいたい一本です。冷酒でキリッと、あるいは旬の食材を使った和食とともに楽しんでみてください。
② 相模灘 槽場直詰 純米吟醸しぼりたて 美山錦 1800ml
蔵が得意とする美山錦を使った純米吟醸の、しぼりたて槽場直詰版です。槽(ふね)から直接瓶に詰め、余計な処理を加えない状態でお届けしてくれます。搾りたての酒が持つ、ありのままの輝きが凝縮された一本です。久保田酒造の丁寧な仕事がもっとも率直に伝わってくる形で飲める、そんな感覚があります。
香りはフレッシュな青りんごや梨を思わせる穏やかな吟醸香。口に含むと、純米吟醸らしい米の旨みがふわりと広がり、その後に爽やかな酸がきれいに伸びていきます。余韻はすっきりとしていて、次の一口を自然に誘う飲み心地です。
日本酒の奥深さを知りたい方に、ぜひ最初の一本として飲んでもらいたいと思っています。鮮度が命の生酒なので、届いたらなるべく早めに楽しむのがおすすめです。刺身や白身魚のシンプルな料理とよく合います。
③ 相模灘 純米吟醸 山田錦 無濾過生酒 1800ml
酒米の王様・山田錦を使った純米吟醸の無濾過生酒です。濾過や火入れを行わず、搾りたての状態を瓶に閉じ込めることで、米の旨みと香りをそのまま届けてくれます。山田錦ならではのふくよかで重心のある味わいが、相模灘の丁寧な仕事によって引き出されています。
立ち上がりは芳醇な果実香。口に入れると山田錦らしいどっしりとした旨みと甘みが広がり、そのあとにやわらかな苦みが輪郭を引き締めます。無濾過ならではの密度感がありながら、後味のキレは意外なほど爽快です。
山田錦好きの方に特に飲んでもらいたい一本です。濃いめの味付けの料理、たとえば肉料理や濃厚な和食とよく合います。冷やして飲むのはもちろん、燗にするとまた違った表情を見せてくれます。
④ 相模灘 純米吟醸 雄町 無濾過生酒 1800ml
現代の酒米のルーツとも言われる希少米・雄町を使った純米吟醸の無濾過生酒です。雄町は酸味とコクのバランスが際立つ個性的な品種。その個性を相模灘の手で丁寧に醸すことで、力強さと繊細さを兼ね備えた味わいに仕上がっています。
香りはやや野趣があり、果物よりも土や穀物を連想させるアーシーなニュアンス。口に含むと最初に雄町らしい酸の張り出しがあり、その後でふくよかな甘みがじわりと広がります。余韻は長く、複雑なコクが口の中に残ります。
「日本酒の個性をちゃんと感じたい」というこだわりのある方に、自信を持っておすすめしたい一本です。単体でじっくり飲んでその深みを探るのもよし、チーズや燻製といった香りの強いつまみに合わせるのもよしです。
⑤ 相模灘 純米大吟醸 1800ml
相模灘の最高峰に位置する純米大吟醸です。精米歩合を高め、低温でじっくりと醸すことで生まれる、繊細で澄んだ味わい。久保田酒造のすべての技術が結集した一本で、特別な場面にこそ手に取ってもらいたい存在です。
香りは白い花や桃を思わせる、上品で清楚な吟醸香。口に入れると極めて柔らかな口当たりとともに、純米ならではの米の旨みがしなやかに伸びていきます。苦みや渋みはほとんどなく、ただただ滑らかで、余韻はすっと消えていく。
大切な人と特別な食事を囲む席に、ぜひ選んでいただきたい一本です。食中酒としての相模灘の哲学は、この純米大吟醸にも貫かれており、繊細な料理とのペアリングで真価を発揮します。
最後に
久保田酒造の蔵元は、蔵の存続が危ぶまれる時期を経て、先祖から続く酒造りを受け継ぎました。その選択が、いまの相模灘へとつながっています。
それから時を重ね、久保田酒造は神奈川の地酒蔵として知られ、多くの酒飲みに愛されています。相模原の山里から、山田錦・美山錦・雄町それぞれの個性を丁寧に引き出したお酒が全国へと届けられています。
グラスに注がれた相模灘に、僕はいつも職人の静かな矜持を感じます。派手さより誠実さを。食卓に寄り添うことを。その一本一本に込められたこだわりをグラスの向こうに感じながら、ゆっくり味わってほしいです。
クロフク編集長
EDITOR-IN-CHIEF
酒販業界に5年。営業・EC運営を通じて1000本以上のお酒と向き合ってきた経験から、本当においしい一本だけをご紹介します。